快適に暮らすための断熱

一年を通して快適な家とは
日々の生活に追われていると、気がつけば月末。季節の移り変わりすら意識せずに過ごしているという方も多いのではないでしょうか。私はそんな日々の中でも季節を感じられるように、毎日のカレンダーに「二十四節気」を記入しています。
二十四節気とは、一年を24の節目に分けて季節を表すもので、「夏至」や「冬至」といった言葉もその一つ。意識的に取り入れることで、日々の中で自然のリズムに目を向けるようにしています。とはいえ、近年では「春や秋が短くなった」「気候と暦がズレてきている」と感じることも増えましたよね。
特に近年の夏の暑さは「夏は暑いもの」という表現では済まされないほどの厳しさ。もはや命に関わるレベルの気温です。
気候そのものは変えられませんが、せめて家の中だけでも快適に過ごしたい——そう感じる方は多いはずです。
快適な家の条件は「断熱性能」
室内の快適さを保つ手段として、多くの方がエアコンなどの空調設備を利用していると思います。しかし、空調に頼るほど電力消費も増え、光熱費がかさむだけでなく、エアコンが苦手な方にとってはストレスにもなりかねません。
ここで重要になるのが「断熱性能」です。
エアコンの効きが悪い、床が冷たく底冷えする——そんな住まいの不満の多くは、実は日本の住宅における断熱性能の低さが原因なのです。
現在、日本国内の既存住宅の約9割が、省エネ基準を満たしていないとされています。つまり、私たちの多くが「暑さ寒さを我慢することが前提の家」に住んでいるという現実があるのです。
WHOも勧める「室温18℃以上」
では、具体的に「どれくらいの室温」が快適で健康的なのでしょうか?
WHO(世界保健機関)は、低体温症や心血管疾患などの健康被害を防ぐために、冬季の室温は18℃以上を保つことを強く推奨しています。これは一部屋だけでなく、廊下やトイレ、脱衣所などを含む家全体が対象です。つまり、家全体を温度差なく快適に保つことが重要だということです。
断熱性能が高い家では、外気の影響を受けにくいため、室内の温度が安定しやすくなります。エアコンをつけなくても、朝晩の寒暖差や日射の影響を受けにくいので、自然と住まいの快適度が上がります。
「体感温度」は空気だけじゃない
ところで、「室温が18℃あるのに寒い」と感じたことはありませんか?
実は、私たちが感じる“体感温度”には、室内の空気温度だけでなく、壁・床・天井・窓などの表面温度も大きく関係しています。
体感温度は、次のような式でおおよそ求められます:
体感温度 ≒(室温+表面温度)÷2
つまり、室温が18℃でも、窓や壁の表面温度が10℃しかなければ、体感的には14℃ほどに感じてしまうということです。
冬の窓際で寒さを感じるのは、まさにこの「表面温度の低さ」によるもの。断熱を強化することで、室内の表面温度を室温に近づけることができ、より快適で健康的な空間が実現します。
健康面でも実証されている「断熱の効果」
断熱リフォームが健康にも良い影響を与えることは、国の調査でも明らかになっています。
たとえば、国土交通省が発表した調査報告では以下のような結果が出ています(※1):
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室温が安定している家では、血圧の季節変動が小さくなる
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断熱改修後、暖房を使いやすくなったことで室温が上がり、家の中での活動量が増加
つまり、断熱を見直すことで「血圧が安定し、健康的に過ごせる」「寒くないから、自然と体を動かす時間が増える」といった効果も期待できるのです。
まとめ
私たちの身体は寒さを感じると血管を収縮させ、体温の放出を防ごうとします。その結果、血圧が上昇します。
特にリビングと浴室・脱衣所との温度差によって起こるヒートショックや、結露が引き金となるアレルギー・喘息なども、断熱性能の不足が原因の一つと考えられています。
住まいの快適性と健康は、密接につながっています。
季節を感じながら、無理なく過ごせる家。これからの住まいづくりやリフォームでは、断熱をどう考えるかがとても大きなポイントになるのではないでしょうか。