前回の「MIYABIの断熱リフォーム Vol.3」では、欧米と比較した際の日本の断熱性能や省エネ基準の遅れについて触れました。
とはいえ、「基準が厳しくなるから性能を上げるべき」と言われても、実感が湧きづらい方も多いかもしれません。
今回はそんな方向けに、「断熱性能を上げた場合に、実際にどんなメリットがあるのか?」を、具体的にご紹介していきます。なお、デメリットについては次回(Vol.5)にてご紹介予定です。
まず、断熱性能を高めることで得られる最大のメリットは「1年中快適な室温で過ごせること」です。
実際に住まいに関する不満を調査したところ、最も多かったのが「冬は寒く、夏は暑い」という声でした。これは断熱が不十分なことで、外気温の影響を大きく受けてしまっていることが原因です。
断熱性能を高めると、外の暑さ寒さを遮りやすくなるため、一度冷暖房で調整した室温が長く保たれやすくなります。また、部屋ごとの温度差も少なくなり、家全体が均一で心地よい空間に変わっていきます。
さらに、近年注目されている「パッシブデザイン(自然の力を活かした設計)」とも相性が良く、光や風を取り入れながら快適性を高める工夫がしやすくなるのもポイントです。
次に大きなメリットが「健康面での効果」です。
室温と健康の関係については、世界中で数多くの調査が行われています。中でも有名なのが、WHO(世界保健機構)の「住宅と健康ガイドライン(2018年)」です。
この中で「冬の室温は18℃以上を保つべき」と明記されています。
冬の室温が18℃を下回ると、以下のような健康リスクが高まると言われています:
血圧の上昇
心臓・呼吸器系の疾患リスク増加
睡眠の質の低下
ヒートショックの発生リスク(特にトイレ・脱衣所などの温度差)
これは日本国内でも同様で、厚生労働省や国土交通省も同様のデータを公表しています。中でも「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査」では、北海道などの高断熱住宅が多い地域では、冬季の死亡率が他県と比べて低いという結果も出ています。
さらに見逃せないのが、「住宅と健康には密接な相関がある」という事実です。慢性的な冷えは、体力の低下やうつ病のリスクにもつながると言われており、年齢を重ねた方や持病のある方にとっては、命に関わるレベルの影響があります。
もちろん、断熱性が高い住宅は夏の熱中症予防にも効果的。外気の熱を遮断し、屋内を安定した温度に保ちやすくなります。
つまり、断熱性能を上げることは、「住まいの快適性」だけでなく「家族の健康を守る」ことにもつながるのです。
ここまで、断熱性能を上げることによる2つの大きなメリットをご紹介してきました。
しかし実は、断熱性の向上にはほかにもたくさんの恩恵があります。たとえば、光熱費の削減、家の寿命の延伸、カビや結露の抑制、住宅の資産価値向上など…。
一方で、どんな工事にもメリットとデメリットはあります。コストや工事の範囲、住みながらのリフォームの難しさなど、あらかじめ知っておきたい注意点も存在します。
次回「MIYABIの断熱リフォーム Vol.5」では、こうした「追加のメリット」と「デメリットや注意点」についても詳しくご紹介していきます。 引き続き、ぜひご覧ください。
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