以前のブログ記事で「住宅性能の中でも、特に“断熱性能”を重視していただきたい」というお話をさせていただきました。今回はその断熱性能について、もう少し踏み込んで解説してみたいと思います。
断熱性能とは簡単に言えば、「室内の快適な温度をどれだけ維持できるか」という住宅の能力を示すものです。夏は涼しく、冬は暖かく過ごせる室内環境を保つためには、この断熱性能が非常に重要になります。
断熱性能を表す代表的な指標が「UA値(外皮平均熱貫流率)」です。これは、建物の屋根・壁・床・窓などを通して、どれだけ熱が外へ逃げてしまうかを数値化したもの。数値が小さいほど、熱が逃げにくく、高い断熱性能を持っていることを意味します。
また、夏の暮らしやすさに関係する指標として「ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)」というものがあります。こちらは、窓などからどれだけ日射熱が室内に入ってくるかを示す数値で、これも小さいほど良好とされます。
具体的には以下のように計算されます。
UA値 =【建物全体の熱損失量】÷【外皮面積】
ηAC値 =【日射熱取得量】÷【外皮面積】×100
こういった数値は一般の方がご自身で計算することは難しいため、「こういう指標で断熱性能を比べられるんだな」と覚えていただくだけで大丈夫です。
続いて、断熱性能を「等級」でわかりやすく示したものが「断熱等級(断熱等性能等級)」です。これは住宅の省エネ性能を示す一つの基準で、耐震等級と同じように1〜7までの段階があります。数字が大きいほど、断熱性能が高いという意味になります。
もともと断熱等級は1〜4まででしたが、2022年に新しく等級5、6、7が追加されました。特に等級5は、国が推奨するZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準に相当します。
さらに、2025年にはすべての新築住宅に対して「断熱等級4以上」が義務化される予定であり、2030年には等級5以上が義務化される見通しです。つまり、これまで“高性能”だった水準が、これからは“最低限”の基準になっていくというわけです。
これから住宅を建てる方はもちろん、今後リフォームを考えている方にとっても、この流れは無視できません。お金をかけて断熱性能を高めても、5年後には「普通」と言われてしまう。そんな時代に突入しています。
引用元:LIXILカタログ
一方で、「もう新築する予定はない」という方もいらっしゃると思います。ですが、今お住まいの住宅の断熱性能がどの程度なのか、気になる方も多いのではないでしょうか?
例えば、木造で築30年程度の住宅の場合、UA値は1.0〜2.0W/㎡・K程度で、断熱等級に換算すると1〜2相当になります。さらに築40年以上の住宅になると、そもそも断熱材が入っていないケースや、断熱材が経年劣化で機能していないことも珍しくありません。
断熱材が沈んでしまっていたり、カビてしまっていたりすれば、本来の性能は発揮されず、実質「断熱ゼロ」というケースもあるのです。
ここ最近、国や自治体が「断熱」に本腰を入れている理由は、日本の住宅の断熱性能が、先進国の中で最も低い水準にあるからです。私たちが当たり前だと思っている生活環境は、実は世界基準で見ると非常に非効率なのです。
ただし、断熱性能を高めることには、大きなメリットがあります。冷暖房の効率が上がり光熱費が抑えられるだけでなく、健康にも良い影響があります。次回は「高断熱住宅の具体的なメリット」や「断熱性能の低い家で暮らすリスク」について、さらに深掘りしてお話したいと思います。
快適で安心できる住まいを目指すために、ぜひ断熱性能にも目を向けていただければと思います。
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