Vol.2|UA値・断熱等級とは?知っておきたい基準
「断熱性能を上げる」とはどういうこと?
「断熱性能を上げると快適になりますよ」と聞いても、実際にどのくらい変わるのか、数字でどう表せるのかは分かりにくいものです。 リフォームを検討する50代・60代にとっては、「老後も安心できる住まい」「光熱費に振り回されない暮らし」が重要なテーマ。その判断軸となるのが、UA値(ユーエーち) と 断熱等級 です。
これらは専門的な言葉に見えますが、実はとてもシンプルです。 「UA値=どれだけ熱が逃げるか」「断熱等級=その性能をどの段階に位置づけるか」を示す指標。 つまり、住まいの“体温”を測るための物差しのようなものです。
UA値とは?
UA値とは「外皮平均熱貫流率(がいひへいきんねつかんりゅうりつ)」の略で、住宅全体からどれだけ熱が逃げるかを示す数値です。単位は「W/㎡K」。 この値が小さいほど断熱性能が高く、冬に暖房で温めた空気が外に逃げにくく、夏には外からの熱が入りにくい家になります。
具体的に、雅の家 大森モデルハウスの例を見てみましょう。
- 改修前:UA値 1.28(断熱等級4以下)
- 改修後:UA値 0.44(断熱等級6相当)
数字で見るとたった0.8の違いのように見えますが、実際には「冬でも素足で過ごせる」ほどの変化です。 外気に左右されにくく、室温がゆるやかに変化する──まさに住まいの“呼吸”が穏やかになった感覚です。
窓から約40%、屋根・天井から25%、壁から15%、床から10%、換気から10%の熱が出入りしていることが分かります。 この中でも特に影響が大きいのが「窓」。ここを改善するだけでも室温は大きく変わります。
断熱等級とは?
UA値をもとに国が定めているのが断熱等級です。 この等級は、住宅の断熱性能を4〜7のランクで評価する仕組みで、等級が上がるほど熱が逃げにくい家になります。
| 等級 | 内容 | 名古屋(6地域)のUA値目安 |
|---|---|---|
| 4 | 2000年基準(当時の次世代省エネ基準) | 0.87以下 |
| 5 | ZEH水準(ゼロエネルギー住宅基準) | 0.60以下 |
| 6 | 新基準。快適性と省エネを両立 | 0.46以下 |
| 7 | 日本最高水準 | 0.26以下 |
日本と海外の基準を比べると
日本の等級6は、実は欧州では「標準」レベルに相当します。 ドイツや北欧では等級7相当が一般的で、外壁や窓の断熱性能が非常に高く、家全体が魔法瓶のように温度を保ちます。
これまで「日本は温暖だから断熱はほどほどでいい」とされてきましたが、今は違います。 酷暑・暖冬・光熱費高騰など、季節を問わずエネルギー負担が増えている現代では、断熱性能の向上はもはや「快適さ」だけでなく暮らしの防衛手段とも言えます。
断熱性能を上げると何が変わる?
UA値や等級を上げることで得られるのは、単なる「省エネ」だけではありません。 それは「家の中で感じる温度のムラ」を減らすことでもあります。
- 朝起きたとき、リビングが冷え切っていない
- 浴室や脱衣室も暖かく、ヒートショックを防げる
- 窓の結露が減り、空気が清潔に保てる
- エアコンを止めても快適さが続く
これらは、すべて「熱が逃げない家」だからこそ得られる実感です。
リフォームで基準を満たすには?
断熱改修を行う際は、効果と施工性のバランスを考えて優先順位をつけることが大切です。
- 窓 ─ 最も効果が高く、施工も容易。内窓や外窓交換で断熱効率が大きく変わる。
- 床 ─ 足元の冷えを改善。体感温度に直結する。
- 天井・屋根 ─ 夏場の熱ごもりを防ぎ、冷房効率を向上。
- 壁 ─ 効果は大きいが、施工範囲が広くコストも上がる。
大森モデルハウスではこれらを組み合わせ、断熱等級6相当を達成しました。 改修後は「エアコンの効きが全く違う」「朝の寒さが気にならなくなった」という声を多くいただいています。
UA値と断熱等級を理解するメリット
- 見積もりが比較しやすくなる:UA値を提示してくれる会社は信頼性が高い。
- 性能の根拠を持てる:どこまでの快適性を目指すのかが明確になる。
- 住まいの弱点を見つけやすい:優先的に改修すべき箇所が分かる。
まとめ:数字の先にある「暮らしやすさ」
UA値と断熱等級は、言ってみれば住まいの「健康診断書」です。 数値を知ることで、家の現状と改善の方向性が見えてきます。 でも大切なのは、数字そのものよりも「その先にある暮らし」。
冬の朝、足元が冷えない。 夏の昼、強い日差しの中でもエアコンが静かに効いている。 そんな何気ない日常の心地よさこそが、性能向上リフォームの本当の価値です。
これからのリフォームは、「断熱等級6を目指す」ことがひとつの目安。 快適で省エネ、そして健康的な暮らしをつくるために、UA値と断熱等級を住まい選びの判断基準にしてみてください。